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イベント情報

開催結果

IIASA-RITE国際シンポジウム2009―持続的な地球温暖化対策と持続可能な社会の実現に向けて―(2009年3月3日開催)開催結果

 去る3月3日(火)、経済産業省のご後援をいただき、経団連会館にて平成20年度IIASA-RITE国際シンポジウムを開催致しました。今回のシンポジウムには、IIASAからWinterfeldt新所長、地球温暖化とエネルギーの研究分野で中心的な役割を果たしておられますNakicenovic氏とAmann氏、また国内からは、製品評価技術基盤機構(NITE)の御園生理事長、電力中央研究所の杉山上席研究員にもご登壇頂き、最新の研究成果をご紹介いただくとともに持続的な社会・経済構築にむけて、求められる取組みの方向性、施策等に関するご意見を伺いました。
 今回も約230名という多くの方に出席を頂きました。ありがとうございます。参加者の皆様の多くは、企業や大学、或いは行政の第一線で、また指導的なお立場で持続可能な経済、社会の実現に向けて取り組んでおられる皆様でした。また、地域で環境問題に取り組まれている皆様の個人参加もありました。皆様に熱心なご発表とご質疑をいただきましたこと、主催者一同、心より感謝申し上げますとともに、研究・開発に今後一層の努力をする決意を新たに致しましたことを報告いたします。

開催概要

日 時
2009年3月3日(火) 13:00~17:35
会 場
経団連会館 14階 経団連ホール(東京都千代田区大手町1-9-4)
主 催
財団法人地球環境産業技術研究機構、国際応用システム分析研究所(IIASA)、IIASA日本委員会
後 援
経済産業省

プログラム

 米国発の金融危機に端を発して世界経済は大きく揺れ動いています。しかしながら、地球温暖化は、景気の循環よりもはるかに長いスパンの問題として確実に進行しています。グローバル化する世界経済において、社会の持続的発展を確保しつつ温暖化問題に対処するためには、将来に向けてどのような政策が望ましいかと言うことを見極め、世界各国、各分野のコンセンサスを採りながら、今から着実に実行していくことが大切です。
 本国際シンポジウムが、地球温暖化問題に関わる研究者のみならず、広く行政機関や企業等関係者の交流の場としても有意義なものになることを願っております。

 講演者による発表資料が、ダウンロード(PDFファイル)できます。以下の発表標題をクリックして、入手下さい。
13:00 ~ 13:05
開会挨拶
(茅 陽一 RITE研究所長・IIASA日本委員会委員長)   
 
13:05 ~ 13:10
来賓挨拶
(三橋 敏宏 経済産業省 産業技術環境局 地球環境技術室長)   
 
13:10 ~ 13:50
“Meeting the Reasearch Challenges of a World in Transition”
(デトロフ・フォン・ウィンターフェルド IIASA所長 
Prof. Detlof von Winterfeldt, Director-General, IIASA)

〔発表主旨:IIASAは、エネルギーと技術、環境と自然資源(土地利用、進化等を含む)、人口と社会(高齢化、国際交渉、リスク分析、脆弱性)を主要な研究課題として取り組み、また、特別プロジェクトとして健康、水、気候変動の研究を進めている。この先、世界がどのような形になるか分からない。異なった外部環境シナリオによって IIASAのとるオプションが異なるが、グローバルトランジションシナリオをベースに戦略を考えようとしている。2020年には、IIASAが世界中の政策決定者から相談してもらえる機関になりたい。〕   
 
13:50 ~ 14:30
“温暖化と資金問題の現実的解法”
(御園生 誠 (独)製品評価技術基盤機構 [NITE]理事長)

〔発表主旨:持続可能性の考え方について、12の判断基準を挙げているが、全てはグレーで程度が問題である。リスクをなるべく定量的に評価し、コストパフォーマンスの高い対策をとることが必要である。温暖化問題には正しい認識が必要で、まず基本的に物質収支を考える事である。経済性も重要で、バイオ燃料でガソリン消費量の10%を代替するとした場合、 約4000億円/年の費用増加、プラス設備投資になるなど、値段が高いほど環境負荷、投入されるエネルギーが大きいことを反映している。リスク評価に基づいた対策評価が必要であり、これによりエネルギー転換した社会への軟着陸が可能と考えられる。なお、しばらくはエネルギーが化石資源が主流であることに変わりは無い。〕   
 
14:30 ~ 15:10
“Climate Stabilization Scenarios: New Integrated Assessment Approaches for IPCC AR5 and Recent IIASA Scenarios”
(ネボーシャ・ナキシェノビッチ IIASA
Prof. Nebojsa Nakicenovic, Leader, Energy Program and Transition to New Technologies Program, IIASA)

〔発表主旨:シナリオは予測ではない、むしろ不確かさを扱うためのツールである。様々な将来状況の道筋を考慮し、行動の影響を評価するもので、モデルでは扱えない部分もあるが、通常忘れがちなものも検討する。シナリオを推進する要素(ドライバー)のうち、人口、経済、技術、政策はモデル化が可能であるが、例えば価値観や知識、理解、権力構造、文化は 変化の大きな担い手だが定量化は困難である。しかし、大きな力を持っている推進要素である。そのため、価値観、知識といった定量化困難なものから経済、開発、技術といった定量的なものへのリンクが重要である。IPCC第5次評価報告書に向けた新シナリオの作成について、どの程度の放射強制力を用いるかが議論となり、最も低い濃度安定化レベルは2.6W/m2という結論に至った。〕   
 
15:10 ~ 15:30
・・・・・休憩・・・・・

15:30 ~ 16:10
“Comparison of GHG mitigation efforts for AnnexI Countries”
(マーカス・アマン IIASA
Prof. Markus Amann, Leader, GAINS(Greenhouse Gas and Air Pollution Interactions and Synergies) Project, IIASA)

〔発表主旨:長期的なGHG排出増加に伴う気候変動の緩和策評価は難しく、まずどのようにこの負担を先進国の間で共有するか検討することが必要である。GAINSモデルを用いて、2020年に向けて附属書I国の間のコスト比較、その削減可能性の比較を行った。公平な経済的負担の実現が必要で、4つのケース、すなわち一人当たり排出量均等、炭素価格均等、GDPあたり費用均等、一人当たり費用均等を考える。 費用の公平性で炭素価格を同じとする時と、一人当たり排出量を同じとする時とでは削減割り当てが大きく違う。一人当たり排出量を同じにすると、結果として得られる炭素価格が国によって大きく違ってくる。GDP当たりの排出費用をそろえると、また違うし、一人当たり費用が一定の場合もまた結論が違う。公平な負担の考え方により、国ごとの負担の度合いが違ってくる。〕   
 
16:10 ~ 16:50
“政策決定におけるシステム分析の役割について”
(杉山大志 (財)電力中央研究所 社会経済研究所 上席研究員)

〔発表主旨:IPCCの報告書をめぐって日本で何が起きてきたか、世俗的にどう理解されているか概括すると、まず、AR4に「疑う余地が無い」という言葉があり、その言葉は地球温暖化は危険であり2度に抑える必要があるということに掛かっているように理解されている。しかしこれは、AR4が主張している事ではないことに、世間の理解と乖離がある。環境規制は政治問題化しないとなかなか進まないが、政治問題化すると 高コストで不合理な規制になりがちである。CO2もその状況になっている。なお一般には、科学の進歩により不確実性が減ると考えられるが、実際にはそうとは限らない。研究が進むほどに新たに発見された因果経路が入ってくるため、不確実性の幅が増えてしまう場合もある。今後もIPCCのプロセスは続く。これは温暖化が重要な問題であることを認識させることに成功した。しかし科学的知見が正確に伝わったかと いうことについては課題がある。IPCC報告書の要約は短くて平易で再解釈の余地が無いものとする必要があろう。その際、気をつけるべき言葉は「不確実性」である。〕   
 
16:50 ~ 17:30
“持続可能な社会の実現に向けた中期と長期の地球温暖化対策シナリオ”
(秋元圭吾 RITEシステム研究グループ グループリーダー)

〔発表主旨:持続可能な社会の実現に向けた中期、長期の温暖化対策シナリオについて、バランスの良い目標が必要であり、費用と効果、優先課題とのバランスも考える必要がある。生命維持、最低限の経済成長、これらの組み合わせで温暖化対策を進めることが必要である。また、将来世代との費用負担のバランス、地域間のバランスも考えなければ全員参加は難しい。その際、発展段階の違いも考慮する必要がある。 GHG削減目標は、持続可能性を達成するために公平な目標が重要である。各国の努力が等しいことが望ましいが、これは基準年に対する削減レベルが等しい事とは違う。RITEのモデル分析の結果では、2030年を目標とするGHG削減費用の日米欧、主要途上国の比較で、米国は特に20ドル未満の削減ポテンシャルが大きい。中国、インドはネガティブコストの削減ポテンシャルが大きい。セクター別では、主要途上国で石炭火力の効率向上について ポテンシャルが高い。費用の均等な負担、能力に応じた負担で公平感を高めることが重要である。〕
  
 
17:30 ~ 17:40
閉会挨拶
(本庄 孝志 RITE専務理事)

お問合わせ

〒619-0292 京都府木津川市木津川台9-2
(財)地球環境産業技術研究機構(RITE) システム研究グループ
TEL: 0774-75-2304  FAX: 0774-75-2317 

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