グループリーダーご挨拶

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乾将行

バイオ研究グループ
グループリーダー
乾 将行

 近年、微生物などを利用したバイオマス資源からのバイオ燃料やグリーン化学品の生産は、新産業バイオリファイナリーとして低炭素社会実現の重要な方策であることが認識され、大きな注目が集まっています。バイオ燃料に関しては、セルロース系エタノールの実用化が遅れていましたが、2014年米国において漸く年産10万KLを超える大規模商業プラントが稼働しました。これは米国政府の支援によるところが大きいですが、セルロースエタノールは従来のコーンエタノールよりもCO2排出削減効果が大きく、資源量も豊富で食料資源とも競合しないことから、クリーン燃料の切り札として大きなが期待が寄せられています。一方、グリーン化学品に関しては、バイオ素材やバイオポリマー等の製造が大幅に生産拡大しています。米国の調査会社によると2017年までに現在の約倍の1300万トン以上の生産量に増加する見込みです。従来型のバイオ化学品の代表である乳酸やコハク酸、アミノ酸に加えて、バイオプラスチックであるバイオポリエチレンテレフタレートやバイオポリエチレンのさらなる拡大が予想されています。
 また、北米で新型天然ガス「シェールガス」の生産が本格化し、世界のエネルギー市場や経済・産業構造を大きく変える「シェールガス革命」が進行しています。シェールガスを原料とする「新・石油化学工業」は,今後急速に拡大が予測されています。これによるメタンやエチレンベースの化学品は、相当のコスト競争力を持つと予想されますが,逆に、炭素数4以上の化学品、および芳香族化学品はシェールガスからの生成が難しく、将来的な価格上昇が予測されています。このような動きは,バイオリファイナリー産業にとって今後追い風になると予測されます。

 バイオ研究グループは、日本ではいち早く1990年代からバイオリファイナリー技術の開発を開始し、コア技術である「増殖非依存型バイオプロセス」を活用して、バイオエタノール、有機酸やアミノ酸の生産プロセスの開発に取り組んでまいりました。その一部は実用化開発の段階に入っています。
 増殖非依存型バイオプロセスとは、アミノ酸の工業生産に用いられてきたコリネ型細菌が増殖を抑制した状態においても主要な代謝系を維持する特徴を活用し、培養した細胞を反応槽に高密度に充填して物質生産を行う、増殖を伴わないバイオプロセスです。増殖を伴わないため、従来の増殖を伴う発酵法と比較して、高い収率(原料から生成物への変換効率)と、高密度細胞による反応のため高い生産速度(STY(space time yield))が達成可能です。また、増殖非依存型バイオプロセスは、非可食バイオマスを原料とするバイオリファイナリー分野において必須とされる技術特性、「C6, C5混合糖の同時利用」と「発酵阻害物質に対する耐性」の両方を達成した唯一のバイオプロセスです。
 今後大きく飛躍するためには、ターゲットとなる生産物を汎用バイオ生成物から、より難易度が高い生成物生産への転換が必要だと考えています。
 より難易度が高い生成物とは何か?我々がターゲットとしているのは、細胞毒性が強い長鎖アルコールや芳香族化合物等の生産です。長鎖アルコールは、バイオジェット燃料の原料として近年急速に注目されており、芳香族化合物は、ポリマー、医薬品、化粧品、染料等の原料として期待されています。これまでバイオプロセスでの長鎖アルコールや芳香族化合物の生産が望まれていましたが、細胞毒性が強いため、微生物の増殖や代謝系を阻害し、増殖を伴う発酵法では生産性が著しく低下するため実用化が困難でした。一方、増殖非依存型バイオプロセスは増殖を伴わないため、発酵法と比較して細胞毒性の強い物質でも生産性が高いことが強みです。さらに、増殖非依存型バイオプロセスに用いるコリネ型細菌は、大腸菌等の工業微生物や溶媒耐性菌等よりも、長鎖アルコールや芳香族化合物等、我々が調べたいずれの物質に対しても耐性が強く、生産宿主として優れていることが分かっています。

 具体的な開発例として、我々RITEと住友ベークライト株式会社は、世界初となるグリーンフェノールの生産及びグリーンフェノール樹脂製造に関わる基盤技術を共同開発してまいりました。原料となる混合糖からのグリーンフェノール直接生成では、反応経路が多段階に及ぶため多くの酵素がフェノールによる強い阻害を受けます。そこで、フェノールの毒性を回避可能な「2段工程法」によるグリーンフェノール生産技術を確立したことで、従来の発酵法では経済的に不可能とされてきた、バイオマス由来の混合糖からのグリーンフェノール製造への展開に目途をつけることができました。これらの成果を基に、2014年5月27日、「グリーンフェノール開発株式会社」を設立し、早期実用化を目指しています。

 今後、グリーンフェノールにとどまらず、これまで実用化が難しかった細胞毒性が強いバイオ燃料・化学品の生産を可能とする「第2世代の増殖非依存型バイオプロセス」を確立し、原料を石油から非可食バイオマスに転換することで、二酸化炭素の排出抑制及び化学製品のグリーン化の促進に寄与することを目指してまいります。
 引き続き、皆様方のご協力、ご支援をお願い致します。

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