グループリーダーご挨拶

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グループリーダーご挨拶

 2016年11月スイスのローザンヌでは、第13回CO2削減技術の国際会議(GHGT-13)が開催され、38ヵ国・地域から約1000人の参加者が集まりました。この国際会議は2年おきに開かれており、2002年と2012年のGHGT-6とGHGT-11は京都議定書誕生の地でもある京都国際会館で開催されました。現在、この国際会議の主題は如何にCO2地中貯留技術を実用化するかです。

 CO2地中貯留技術は1970年代から北米地域で行われてきた油田へのCO2圧入に伴う原油の増進回収(CO2-EOR)技術を背景にしています。このため、油ガス田開発で培われてきた様々な技術が、貯留サイトの調査・評価やCO2圧入・モニタリングに生かされています。北海のSleipnerサイト(ノルウェー)では、1996年から年間約100万トンの天然ガス随伴CO2を海底下の地層に圧入してきました。この世界初のCO2地中貯留事業は、圧入開始から20年ほどが経過しており、これまでに圧入したCO2は約1,600万トンに上ります。このサイトではCO2漏洩や誘発地震のような懸念事項は報告されておらず、安全なCO2地中貯留が実現できています。

 Sleipnerサイトの安全な貯留の実績やCO2-EOR技術があるにもかかわらず、なぜCO2地中貯留技術の実用化が進んでいないかと不思議に思う方が多いでしょう。新しい技術が普及するためには、技術的・経済的・社会的に評価されなければなりません。技術的評価に関しては、何と言ってもCO2地中貯留の安全性を高めることが重要です。安全性を高めるには、貯留サイトの地質や様々な技術の不確実性によるリスクを最小限に抑える必要があります。CO2貯留研究グループでは、CO2圧入安全管理ツールを開発しています。このツールが完成されれば、圧入されたCO2挙動モニタリング結果やサイト周辺の自然地震や微小振動(CO2圧入に伴う極微小地震)の観測データなどを総合的に解析し、懸念されるCO2漏洩や誘発地震のリスクマネジメントが可能となります。

 地中貯留の実用化には、小規模(pilot-scale)のCO2圧入から大規模(large-scale)へのアップスケーリングが欠かせません。このようなアップスケーリングでは、関連技術の有効性だけでなく、様々な技術を統合(integration)することにより、事業の経済性(コスト削減)の向上や信頼性(社会的受容性)の獲得も可能です。CO2貯留研究グループでは、日米CCS協力の下で、ローレンス・バークレー国立研究所、イリノイ大学、テキサス大学との共同研究を通じて、大規模CO2地中貯留の技術・経験・ノウハウの共有を進めています。また、2016年4月に設立された「二酸化炭素地中貯留技術研究組合」の一員として、技術組合のメンバーである産業技術総合研究所、国際石油開発帝石株式会社、石油資源開発株式会社、大成建設株式会社、応用地質株式会社とともに、我が国の地質特性に適した実用化規模(100万トン/年)のCO2地中貯留技術開発に取り組んでいます。皆様方のご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

CO2貯留研究グループ グループリーダー 薛 自求

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