日本のCO₂回収技術は、材料研究からプラント開発までの全ての領域において海外技術に対する優位性を築いてきました。カーボンニュートラル実現に向けて、世界規模で成長するCO₂分離回収市場でのシェア拡大には国内企業の更なる競争力強化が不可欠です。しかし、国内には実際の燃焼排ガス(実ガス)を用いてCO₂分離素材を評価する公正で中立的な試験センターが無く、これまで一部の企業は海外の試験センターを利用していました。
この状況を打破すべく、RITEは、2022年度にグリーンイノベーション基金事業「CO₂分離素材の標準評価基盤の確立」を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託し、実ガスを用いたCO₂分離素材の評価試験を行う共通基盤の設計、製作、設置を経て、2025年度に国内初となる炭素回収技術評価センター(RCCC:RITE Carbon Capture Center)を開設しました。
International Test Center Network (ITCN) 17機関
CO₂分離回収技術の研究開発を推進する施設のグローバル連合(2012年設立)で、CO₂分離回収技術の商業化を加速させる知識・情報、特に発電所への適用についての実用化およびコスト削減に関する技術の共有を目的としています。
世界には実ガスでの評価設備が複数設立済み。
2025年、日本にも試験の拠点となる炭素回収技術評価試験センター(RCCC)を設立。
低コスト・低エネルギーのCO₂分離回収技術を確立するにはCO₂回収性能を飛躍的に向上させる素材開発が鍵となります。RCCCは、実ガスによる統一的な標準評価法および試験評価技術を提供することにより、新規素材メーカーの参入を容易にし、エンジニアリング会社との連携を促進することに貢献します。
炭素回収技術評価センター(RCCC)は、けいはんな学研都市のRITE本部内に設置され、都市ガスを燃焼させた実排ガスを用いて、化学吸収法、吸着法、膜分離法による各種CO₂分離回収素材の評価を行うことができます。
試験設備フロー図
都市ガス燃焼ボイラを2基備え、4基の試験設備に合計400kg/日相当のCO₂を含む排ガスを24時間供給するとともに、試験に必要な希釈用空気や冷却水を供給することができます。
2)吸収液試験設備
化学吸収法は、ガス中のCO₂を吸収液に化学的に吸収させた後、加熱することでCO₂を吸収液から分離・回収する技術であり、大規模に発生する常圧~中圧のガスからのCO₂分離・回収に適しています。本試験設備では、実排ガスを用いた吸収液性能を知ることができます。
3)PSA試験設備
PSA法は、Pressure Swing Adsorption (圧力スイング吸着) の略で、ガスの圧力を変化させて吸着と脱着を繰り返すことで、目的のガスを分離・精製する技術です。本試験設備では、実排ガスを用いて吸着材の性能を知ることができます。
膜分離法は、供給側と透過側のCO₂分圧差を駆動力とし、分離膜に対するガスの溶解性と拡散性の差を利用して目的のガスを分離・精製する技術です。本試験設備では、実排ガスを用いた膜モジュール性能を知ることができます。
吸着法(TSA: Thermal Swing Adsorption)、分離膜(単膜)試験設備についても設置予定です。
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(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)
化学研究グループ
アドレス:kagaku@rite.or.jp