事業内容
鉄鋼業では、製造工程でCO2を多く排出することが課題となっており、実際、鉄鋼業は産業部門全体の40%ものCO2を排出しています。現在普及している石炭を用いて鉄鉱石を還元する高炉法の脱炭素化に向けては、水素を直接吹き込む技術や、水素を高炉ガスから分離したCO2 と反応させて生成したメタンを吹き込むカーボンリサイクル技術などの研究開発が進められていますが、これら革新技術の確立や、水素供給を始めとする社会インフラの整備状況までの時間軸等を踏まえると、複数の技術的アプローチを行っていくことが適当です。コークスの使用によるCO2 の発生については、バイオマスやCCUS技術を適用することで、現在普及している高炉システムを生かして脱炭素を実現することが可能であり、化学吸収液を使った分離回収の商用機への適用が始まっています。
前NEDO事業では、水以外の溶媒を用いた吸収液において、吸収形態および分極影響を制御することで更なるエネルギー消費低減の可能性を見出し、化学吸収法におけるブレークスルー技術として「混合溶媒系吸収液」を提示しました。
図 混合溶媒系吸収液のコンセプト
従来のアミン系化学吸収液で一般的であった溶媒の水の一部を非水溶媒に置き換えることにより。溶液の比熱やCO2との反応熱が低減できます。但し、化学種や液組成の最適設計、更には実用性検討等の課題解決はこれからであり、本事業において継続して研究開発に取り組んでいます。
2022年度は、溶媒探索及び組成最適化を通して新規の高性能吸収液を開発しました。これらの吸収液は安全性及び環境性能において従来液と同等であり、実用化に問題が無いことを確認しました。また、混合溶媒系吸収液と触媒添加の相乗効果発現の可能性を検討するためのデータを蓄積しました。今後、2023年8月に導入した「高性能液評価用CO2吸収小型連続試験装置」による連続試験を通じてプロセス性能を評価する計画です。
高炉実ガス試験に向け、混合溶媒系吸収液の劣化耐久性を評価するために模擬ガス試験装置を導入しました。高性能混合溶媒系吸収液の新規開発および新たな非水溶媒を探索した結果、有望な候補を選定しました。