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研究内容(プロジェクト)

二酸化炭素地中貯留に関するシステム研究

「地中貯留に関するシステム研究」の概要

経済性評価

二酸化炭素地中貯留の「経済性評価」として、「総合経済性評価」、「コスト分析」、「LCA評価」を行っています。

総合経済性評価

どこの地中貯留サイトに、いつ頃、どれくらいのCO2貯留を行うのが費用効果的なのかを、回収、貯留サイトの地理的特性や、他の技術オプションとの競合等を考慮しつつ、整合性のある評価を行うことを目的としています。そのために、数理計画モデルを構築し、分析・評価を行っています。

  • モデルの概要

モデルのタイプ:動学的混合整数計画モデル(エネルギー、CO2回収・貯留コスト最小化)

評価対象期間:2000~2050年

評価地域:日本を47都道府県別、沿岸海域帯水層13地点、海洋隔離想定地点1地点

評価技術:エネルギー供給、CO2回収・貯留技術については、技術を個別(ボトムアップ的)にモデル化、エネルギー需要技術については、集約的(トップダウン的)にモデル化

  • モデル計算における主な前提条件

将来人口:人口問題研究所平成14年中位推計

一人当たりGDP成長率:+1.5%/年(2000-2050年)

GDP当たり最終エネルギー需要成長率:IPCC排出シナリオに関する特別報告書(SRES)B2-OECD90平均

再生可能エネルギーコスト:風力-1%/年、太陽光-3%/年で低減

貯留可能量・浸透率:表1(文献:S.Tanaka et al., Energy Convers. Mgmt, 1995他)

表1,沿岸海域における帯水層ポテンシャルと浸透率の想定。

ここでは、国の基礎試錐調査により背斜構造を有するとされている沿岸海域における帯水層のみを想定しています。また、「香住沖」の浸透率は推定されていないため、近隣の「鳥取沖」の値で代用しています。これらの調査は、本来、石油・ガス探査を目的としたものであるため、今後のCO2貯留ポテンシャルの調査によって、より大きなポテンシャルが見出せると考えられています。

沿岸海域における帯水層貯留可能容量(MtC)浸透率(md)
[1] 北見大和堆 16.4 3 - 8
[2] 十勝沖 22.4 14 - 781
[3] 西津軽沖 7.6 6 - 53
[4] 野石沖 4.9 12 - 24
[5] 相馬沖 0.8 20 - 300
[6] 佐渡沖 5.2 290
[7] 柏崎沖 18.3 10 - 100
[8] 直江津沖北 38.5 10 - 110
[9] 金沢沖 134.7 5 - 100
[10]御前崎沖 9.5 3
[11]香住沖 37.4 23 - 30
[12]鳥取沖 82.9 23 - 30
[13]宮古島沖 67.6 7 - 74

出典:S.Tanaka et al., Energy Convers. Mgmt, 1995他

  • 試算結果

日本の二酸化炭素(CO2)排出量を2000年より年率0.5%で削減するシナリオ下における日本全体のCO2排出量およびCO2回収・貯留量を図1に示します。また、帯水層別の2020年と2040年時点の貯留量を図2に示します。

日本のCO2排出量およびCO2回収・貯留量

図1 日本のCO2排出量およびCO2回収・貯留量。

他のオプション(破線部分と色付きの面グラフの差の部分)と共に、CO2削減において貯留技術の役割は大きいです。地中(帯水層)貯留が2010年を過ぎるあたりから、海洋隔離は2020年を過ぎるあたりから利用することが、この排出抑制目標下ではコスト効率的です。ここでは、比較的貯留可能量がはっきりしている国の基礎試錐調査により背斜構造を有するとされている沿岸海域における帯水層のみを評価対象としていますが、実際には、更に利用できる帯水層は多くあると見られており、より大きな削減効果があると考えられます。

帯水層別の2020年と2040年の年間CO2貯留量

図2 帯水層別の2020年と2040年の年間CO2貯留量。

大規模排出源との距離や排出源の排出量、帯水層の容量、帯水層の浸透率などによって、コストなどが異なってきます。それら複雑な条件を整合的に評価した結果として、日本全体で目標排出量に抑制するための最もコスト効率的な削減を示しています。

国の基礎試錐調査により背斜構造を有するとされている沿岸海域における帯水層以外の地質情報を更にモデルに追加して分析するなど、今後更に分析・評価を進めていきます。

コスト分析

「コスト分析」では、大規模排出源から排出されるCO2を日本近海の帯水層へ貯留した場合を想定し、適地を選定するための地質調査コスト、事業規模の圧入設備の建設費や操業費、CO2が安定して貯留されていることを確認するためのモニタリング費を試算するとともに、サイト特性がコストに与える影響についても併せて評価しました。

  • CO2圧入コストの分析

CO2の圧入コストは帯水層の立地条件や地質条件により、適切なCO2圧入工法やそのコストも変わります。CO2圧入工法がCO2圧入コストに与える影響を評価した例を図3に示します。



図3 圧入工法の違いによる圧入コスト。

推定にあたっての想定条件は、圧入レート10,000t-CO2/day、圧入期間20年。貯留層の浸透率200md、孔隙率20%、層厚100m、圧入上限圧150kg/cm2など。

  • 地質調査コストの分析

地質調査コストについても、対象となる帯水層の立地条件や想定される大きさにより必要な調査範囲や調査方法が異なり、そのコストも変わります。一例として、物理探査コストの試算例を表2に示します。

表2 地質調査工程のコスト試算(物理探査)

想定した調査対象面積費用(億円)
概査:二次元物理探査船 50km×100km(5,000km2) 1.5~2.5
精査:浅海域以外の場合-三次元物理探査船 20km×20km(400km2) 3~5
精査:浅海域の場合-OBC(Ocean Bottom Cable) 同上 18~30

LCA評価

CO2排出以降のガスを分離・回収(化学吸収法を想定)して地中貯留を行った場合のLCA(ライフサイクルアセスメント)評価例を示します。LCAから見ても地中貯留のCO2削減効果は十分大きいことがわかります。計算条件等の詳細については、平成12および13年度の報告書を参照下さい。

表3 LCAによって推定した各分野においてCO2地中貯留を適用した際のCO2削減効果

分野CO2排出原単位(貯留前)CO2排出原単位(貯留後)CO2削減効果(%)
石炭火力発電 0.78 kg-CO2/kWh 0.20~0.23 kg-CO2/kWh 約70~74
天然ガス火力発電 0.43 kg-CO2/kWh 0.11~0.13 kg-CO2/kWh 約70~74
鉄鋼 355 kg-CO2/t-鋼 84 kg-CO2/t-鋼 約76~77
セメント工業 820 kg-CO2/t-セメント 194 kg-CO2/t-セメント 約76~77

<前提条件の概略>

  • 発電設備:石炭火力、天然ガス火力(出力:60万kW、設備稼働率:70%、耐用年数:25年、発電効率:43%)
  • 鉄鋼生産設備:粗鋼710万トン/年
  • セメント生産設備:クリンカー224万トン/年
  • CO2分離・回収:化学吸収法
  • CO2パイプライン輸送距離:500km
  • CO2貯留注入深度:2000m

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