プロジェクト

二酸化炭素分離膜モジュール実用化研究開発

事業名称: CO₂分離回収技術の研究開発/二酸化炭素分離膜モジュール実用化研究開発
委託元: NEDO
事業期間: 2018年4月1日~2021年6月30日

事業内容

 本事業では、圧力を有するガス源である石炭ガス化複合発電(IGCC)からのCO2分離・回収において、CO2分離・回収コストを大幅に低減しうる革新的な技術である分子ゲート膜モジュールについての実ガス試験による実用化研究開発を実施しました。実用化段階において分離・回収コスト1,500円/t-CO2以下を達成する膜モジュールシステムの実用化を目指すことを目的として研究開発を行い、以下の成果を得ました。

 
(1)実ガスを用いたCO2分離性能試験による課題抽出と解決
 単膜(膜材料)および膜エレメントの石炭ガス化ガス中の不純物に対する耐性を確認するために、実ガス試験や硫化水素曝露試験を実施しました。単膜については、約1,000ppmのH2S濃度での加速試験(IGCCプロセスでの想定ガスH2S濃度は10ppm以下)を実施し、2.4MPaにて約3日間の試験期間に、分離性能の低下がほとんど認められないことを確認しました。膜エレメントについては、石炭ガス化ガスを用いた実ガス試験2インチ膜エレメントおよび4インチ膜エレメントの実ガス試験を実施し、いずれの膜エレメントについても、実ガス試験時の分離性能が経時的に低下しないことを確認しました。さらに、実ガス試験前後にRITEで実施した模擬ガス試験の結果、実ガス試験前後の分離性能に大きな違いはなく、膜エレメントの実ガスに対する初期(短期)の耐久性を確認することができました。

 

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(2)膜材料と膜エレメントの最適化

 連続製膜の薄膜化検討と、膜製膜処方(膜構成成分の組成、製膜手順等)の最適化検討を組み合わせて、単膜の模擬ガス試験において、事業目標のCO2分離・回収コスト(≦1,500円/t-CO2)を達成する分離性能を得ることが出来ました。また、膜性能及び耐久性を向上させるための製膜処方の改良を行い、膜材料の耐久性が向上することを見出しました。
 
 連続製膜については、製膜レシピを改善し、当初の製膜速度に対して、最大10倍の速度での製膜が可能となりました。また、現行の支持膜について、薄膜化を達成する製膜処方を確立し、長尺製膜時の長手方向の均質性も確認できました。さらに、広幅支持膜を用いた連続製膜を実施できました。膜エレメント製作については、膜エレメント構成および作製処方を最適化することで、リークなく膜エレメントを作製することが出来ました。また、膜エレメントの模擬ガス試験を行い、CO2およびHeパーミアンスが安定であることを確認しました。さらに、外径2インチから4インチへのスケールアップ検討を行い、実機サイズの膜エレメント製造装置の概念設計を実施しました。

 

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(3)経済性評価
 実ガス試験、模擬ガス試験により取得した分離性能データに基づき、CO2分離・回収コスト、エネルギーについて試算しました。単膜の模擬ガスによる分離性能評価結果(初期性能)に基づく試算の結果、CO2分離・回収コストが1,320円/t-CO2、CO2分離・回収エネルギーが0.396 GJ/t-CO2となり、単膜として本事業の最終目標値(1,500円/t- CO2以下、0.5GJ/t-CO2以下)を達成する結果が得られました。しかしながら、単膜の経時的な分離性能の低下の問題が生じたため、耐久性を考慮すると、現状では膜材料としてもコスト目標は未達であり、コスト目標達成のためには、耐久性の向上が必須であること、また膜エレメントについては、現状の分離性能では目標に未達でああり、単膜と同等の諸元にすることによって単膜と同程度の分離性能となり、目標を達成することが期待されます。
 膜モジュールシステムの概念設計を行い、技術的に実現可能なシステム構成の目処を得ました。また、IGCCへの膜モジュールシステムの導入が発電効率等に与える影響について試算を行い、回収率の増加とともに発電端効率が減少すること、CO2純度が増加すると発電端効率が増加することを確認しました。


(4)CO2分離回収技術に関する情報収集発信
 研究推進委員会を2018年度、2019年度、2020~2021年度に各3回開催し、研究推進委員からの指導、助言に基づき、検討課題の改善を図りました。また、学会、講演会等での情報収集発信を行ないました。
 2018年度に第8回革新的CO2膜分離技術シンポジウムを、2019年度に「先進的二酸化炭素固体吸収材実用化研究開発」との共同で、革新的CO2分離回収技術シンポジウムを、2020年度に「先進的二酸化炭素固体吸収材の石炭燃焼排ガス適用性研究」との共同で、革新的CO2分離回収技術シンポジウムを開催しました。各講演を通じて、官民挙げて取り組んでいる地球温暖化防止に貢献するCO2削減に関する研究活動と、次世代型膜モジュール技術研究組合が本事業において取り組んでいる二酸化炭素分離膜モジュールの実用化研究開発について理解を深めていただくことができました。

 

 以上より、本事業の実施内容を完了し、開発目標に対しては、達成した項目とともに、開発目標の達成に向けた技術課題の抽出と課題解決に向けた指針を見出しました。

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