
| 図14.生物影響評価技術の開発:シロギス稚魚への急性影響 |
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環境影響評価技術の開発(1)
図14は、シロギスの稚魚に及ぼすCO2の影響を調べるためにおこなった実験方法とその結果です。
CO2濃度を1〜10%に調整した空気を吹き込んだ海水と空気(CO2濃度は現在の大気と同じ)のみを吹き込んだ海水の水槽に、仔稚魚収容器(海水は自由に出入り可能)に稚魚を入れて飼育し、生存率を観察しました。下の図は、シロギスの稚魚の生存率と調整空気のCO2濃度との関係を表したものです。
CO2濃度調整空気のCO2濃度が4%以上になると生存率が50%以下になり、CO2の影響が無視できなくなります。
海洋隔離で予想されるCO2濃度は、カーテン状の初期放出域で約1%以下であることから、この実験によればCO2による急性影響はほとんどないと推定されます。
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| 図15.生物影響評価技術の開発:中層プランクトンへの急性影響 |
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環境影響評価技術の開発(2)
図15は、日本近海の中層(水深1000m付近)のプランクトンを用いて船上でCO2の曝露実験を実施した結果です。
採取地点は日本近海であり、採取したプランクトンはカイアシ類やオキアミ類で、数mmから数cmのマイクロネクトンと呼ばれる生物です。こういった生物の死亡率は、水槽へCO2を吹き込んだ曝露時間とともに増加します。通常の海水で飼育した場合の死亡率は約2週間後に50%になりましたが、CO2濃度が2.9%の場合の死亡率は約7日で約100%に達しました。この実験の結果、海水中のCO2濃度の増加に伴い、プランクトンの生存時間が短くなることが確認されました。
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海洋隔離を実施した場合に予想されるCO2濃度は、高濃度予測されるカーテン状の初期プルームの中でも約1%以下であり、さらに濃度は1日で数十分の1まで希釈されることが分かっています。したがって、プランクトンの生息する環境は、通常海水とほとんど変わらないと考えられ、隔離の実施によるプランクトンの死亡率の大きな違いは生じないと推定されます。
この実験は、高CO2濃度の海水にさらされたプランクトンに対する影響、即ち急性影響が対象でした。一方、慢性影響も検討課題のひとつです。慢性影響とは低CO2濃度の環境に長期間さらされた場合の生物に生じる影響です。今後は、生物影響予測モデルなどを用いて検討をする予定です。
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| 図16.生物影響評価技術の開発:ヒラメの生理機能への影響 |
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環境影響評価技術の開発(3)
図16は、CO2の生物への影響を、成魚の生理機能の側面から調べた結果です。
ヒラメから血液を連続採血できるようにして、そのヒラメを、3%のCO2を含む空気を吹き込んだ海水中へ入れて、血液中のpHやCO2濃度などの時間変化を調べた結果です。血液中のpHは速やかに回復していますが、HCO3-イオン濃度などは回復せず、CO2の影響が残ることが示されました。
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この結果から、生物には、pHのような単なる水素イオン濃度による影響と異なり、CO2固有の影響があることが分かってきました。Moving
Ship方式の海洋隔離ではCO2の影響は少ないと推定されますが、今後さらに、CO2固有の生物影響について詳細な研究が必要であると考えております。
なお、2001年12月28日にNHK−TVで、京大の白山先生のCO2によるウニの受精率への影響に関する研究成果が報道されました。それによると、CO2濃度が500ppmの大気と平衡にある海水中では、ウニの受精率の低下が見出されるとのことです。
この研究成果は、このまま大気中のCO2濃度が増加していくと、気温上昇による温暖化の影響が表面化するよりも前に、CO2が海洋生物に対して直接影響を与える可能性があることを示しています。
海洋隔離は、海洋表層を通らないように大気と海洋中深層を直接結合するバイパス技術であり、生物が多い海洋表層の環境を保全するという意味で有効であると思われます。 |