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Beyond 2010

エネルギー・環境評価モデルDNE21+の概要

2013年以降の温暖化対応方策に関する調査研究(通称:Beyond2010)

エネルギー・環境評価モデルDNE21+の概要

地域差を十分に反映しつつ、第2約束期間以降の温暖化枠組みを分析、評価できるようにするために、世界を77地域分割し、2030年までを中心とした期間のコスト効率的な温暖化方策を評価可能なモデルを構築しました。以下にモデルの概要を示します。

  • 1.モデルタイプ(線形計画モデル-エネルギーシステム総コスト最小化)
    本調査研究で開発したモデルは、複数時点を同時に最適化する動学的な線形計画モデルです。そして、エネルギー供給(例えば、発電技術など)、CO2回収・貯留技術については、いわゆる「ボトムアップ」的にモデル化しており、各種温暖化対策技術を明示的に評価できる特徴があります。エネルギー需要サイドの技術については、基本的には、マクロ的に扱う「トップダウン」的なアプローチをとっていますが、ボトムアップ的排出削減目標の評価においては、鉄鋼、セメントなど、エネルギー多消費産業についても、個別技術を「ボトムアップ」的にモデル化し、これら部門における各種の省エネルギー・温暖化対策技術を明示的に評価できる特徴があります。
  • 2.評価対象期間(2000-2050年が中心で可変)

    第2約束期間を中心とした分析・評価が目的であるため、2030年までをステップ幅を小さく5年間隔としてモデル構築を行いました。2000年を基準年として、2005、2010、2015、2020、2025、2030、2040、2050、2075、2100年の10時点を最適化代表時点としています。ただし、最適化計算においては、評価する排出削減枠組みに応じて、例えば、ボトムアップ的な排出目標の評価においては、エネルギー需要部門の個別技術の見通しが困難なことから、そのうち、2030年までに限定した分析・評価を行う一方、長期的なCO2濃度安定化目標の評価においては、2050年や2100年までの分析・評価を行っています。

  • 3.世界地域分割(54地域)

    CO2排出削減枠組と削減目標によって、特にアジアを中心とした国々の削減コストがどうなるかの評価を主目的としているため、COPのAnnex I諸国や、EU、ASEAN等の区分が容易な地域分けとしました。国レベルでの地域区分は54であり、また、米国、カナダ、ロシア、中国、インド、オーストラリアについては、国内を更に分割し、それらを含めると計77地域分割となっています。 例えば、「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)」参加6ヶ国(日本、米国、オーストラリア、韓国、中国、インド)も完全に独立した地域分割となっており、各種の地域間の排出削減枠組みについても、分析・評価が容易になっています。

  • 4.エネルギー変換過程のモデル化

    エネルギー変換過程については、DNE21モデルとほぼ同等のモデル化しました。ただし、これまでのDNE21モデルでは、例えば、石炭火力、石油火力、天然ガス火力といった区分でしか分類していませんでしたが、地域差をより正確に表現するために、本モデルでは、石炭火力でも、設備費が安価だが低効率なもの、設備費は高価だが高効率なものといった複数の設備をモデル化しました。これは、Energy Efficiency Standardや、途上国の資金制約(CDM分析とも関連可能)を考慮した分析・評価においても有効となります。
    一方、エネルギー利用技術については、基本的には「トップダウン」的なアプローチをとっていますが、ボトムアップ的排出削減目標の評価においては、鉄鋼、セメント、紙パ、石油化学などのエネルギー多消費産業について、個別技術を「ボトムアップ」的にモデル化しています。これによって、エネルギー変換プロセスのみならず、エネルギー利用技術についても、具体的な技術方策を明示することが可能となっています。しかも、エネルギー供給側の対策とエネルギー需要側の対策がモデルによって一体的に評価されるため、全体が整合した方策を提示できます。

    鉄鋼業におけるモデル化(一部分:中レベルの省エネ・CO2排出削減技術)

  • 5.前提条件データ

    モデルには以下のようなデータを使用しており、モデルの地域分割が詳細なために、その多くは、GIS(Geographical Information System)データとの整合性を高く保っており、その他についても、国別データに基づいています。化石燃料資源、再生可能エネルギー資源、 CO2貯留容量などはGISデータと整合しており、最終エネルギー需要、発電設備やその他エネルギー変換設備のヴィンテージ(何年にどれだけの容量の設備が建設されたか)などは、国別の統計データ等と整合したものとなっています。

    石油資源量(在来型)の想定(出典:米国地質調査所)

    帯水層への究極的なCO2貯留可能量の想定(出典:米国地質調査所による堆積盆地データ等を元にRITEにて推定したもの。モデルでは、このうち、陸域の10%、沿岸海域の20%が利用可能と想定しています。)

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