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イベント情報

開催結果

ALPS国際シンポジウム2015―気候変動問題のための実効性ある枠組みと評価―COP21に向けて―(2015年2月27日開催)開催結果

 ALPS国際シンポジウム2015を下記のように開催いたしました。官公庁、大学、研究機関、企業、その他団体等から212名の方に参加いただきました。
 気候変動枠組条約では、新たに実効ある枠組み構築について議論がなされており、各国の2020年以降の約束草案(Nationally Determined Contributions (NDCs))提出は2015年12月パリにおけるCOP21までになされる予定ですが、合意への道のりは平坦ではありません。プレッジアンドレビュー(P&R)の重要性と、具体的な削減努力指標の提案がありました。そのような中、日本は国内エネルギーミックス計画を打ち出す必要があります。産業革命以前比2℃以内に抑制する目標の実現困難性については気候感度の不確実性にも影響することが指摘されました。深い知見と経験を有する専門家によって、このように大変有意義な講演そして議論が展開されました

開催概要

日 時
2015年2月27日(金) 10:00~17:35
会 場
大手町サンケイプラザ 4Fホール(東京)
主 催
公益財団法人地球環境産業技術研究機構
共 催
経済産業省
参加者数
212名

プログラム

 気候変動政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書が刊行され、IPCCは、人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の主な要因であった可能性が極めて高い、と従来の報告書よりも更に強い確信度を持って気候変動に関する警鐘を鳴らしました。さらにIPCCは、今後の気候変動戦略立案において有用となり得る査読論文に基づく様々な長期排出緩和シナリオを提示しました。気候変動枠組条約では、新たに実効ある枠組み構築について議論がなされています。その枠組みと、各国の2020年以降の約束草案(Nationally Determined Contributions (NDCs))提出は2015年12月パリにおけるCOP21までになされる予定ですが、合意への道のりは平坦ではありません。日本も約束草案を提出しなければならず、またその前には国内エネルギーミックス計画を打ち出す必要がありますが、福島第一原子力発電の事故後の不透明なエネルギー政策も要因となり、容易に策定できるものでありません。
 RITEでは、経済産業省の委託事業として「地球温暖化対策技術の分析・評価に関する国際連携事業」(通称ALPS: ALternative Pathways toward Sustainable development and climate stabilization)を実施しています。この研究事業では、グリーン成長につながるようにするには、温室効果ガス排出削減を中心とする温暖化緩和、温暖化の影響への適応策をどのように進めるべきなのか、また、どのような政策が有効なのかに焦点を当てた研究を行っています。そして、地球温暖化問題研究で世界的に著名なオーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA: International Institute for Applied Systems Analysis)、米国の未来資源研究所(RFF: Resource for the Future)をはじめ、世界の研究機関とも協力しながら研究を進めています。
 このたび、エネルギーと気候変動の両方において政策決定の重要な時期に、本研究事業の成果報告会として平成26年度ALPS国際シンポジウムを開催致しました。また本シンポジウムには、この分野で活躍している国内外の著名な専門家をお招きし、ご講演頂きました。
 
 各報告者による発表資料が、ダウンロード(PDFファイル)できます。発表標題をクリックして、入手下さい。

 

※敬称略

 

10:00 開会挨拶
 山地憲治, RITE研究所長
10:05 来賓挨拶
 三又裕生, 経済産業省 大臣官房審議官(環境問題担当)
10:10 COP21への約束草案作成に向けたわが国の取組み [2,227KB]
山地憲治, RITE研究所長

発表主旨:
COP19の決定に基づき、すべての国はCOP21に十分に先立って自主的に決定する約束草案を提出することが求められている。日本は京都議定書の目標は超過達成したが、森林吸収と京都メカニズムの寄与が大きく、震災以降発電部門におけるCO2排出原単位は上昇している。世界における日本の排出シェアは減っており、技術で如何に世界に貢献するかが重要。2030年に向けたエネルギーミックスについて議論が始まり、そこでは原子力発電の運転制限の影響やFITによる再生エネ導入促進に伴う国民負担との両立など課題などが議論されている。
10:55 気候感度の不確定性を考慮した排出パスの再検討 [808KB]
茅 陽一, RITE理事長

発表主旨:
困難な2℃目標に対処する方策として気候感度の検証を行った。気候感度は従来、気候モデル(AOGCM)による推定が中心であったが、エネルギーバランスモデルなど異なる推定も発表され、IPCC AR5では幅推定値の下限が0.5℃下がり、最良推定値は決定されなかった。CO2累積排出量と温度上昇の相関(IPCC AR5 WG1)から2℃目標における残余累積CO2排出量は気候感度3℃では1,000Gt-CO2、気候感度2.5℃では1,800Gt-CO2と大きく異なる。気候感度の変化(3℃ →2.5℃)によりCO2限界削減費用は大幅に低下するなど、大きく影響を与えることからも気候感度の不確実性を小さくする努力が重要である。
11:40 パリへの道:地球規模コミットメントから各国約束とコベネフィットへ [1,425KB]
Nebojsa Nakicenovic, IIASA副所長

発表主旨:
世界的なエネルギー需要拡大(CCSの要因大)に伴って水需要も増大しており、厳しい状況が予測される。気候安定化及び持続的な将来の達成に向けては数多くのパスを提供できる資源と技術が存在する。世界の脱炭素化にはその他の持続可能な発展を達成するコベネフィット(エネルギーセキュリティー、大気汚染等)がある。気候変動、経済発展第一で解決しようとしても、道のりは遠い。多面的な目的、政策の観点からフレーミングすることにより気候変動問題のトレードオフ、コベネフィットが見えてくる。世界的なエネルギーシステム全般にわたり技術変化を加速し、社会的に受容される投資を促進するための新たなエネルギー政策が必要である。
12:25 休憩
13:40 海外石炭火力発電所新設に対する公的融資制限及び規制案の評価 [571KB]
長島美由紀 RITEシステム研究グループ 主任研究員

発表主旨:
米国は、低炭素発電に対する融資促進を目指し、海外石炭火力新設に対する融資制限を発表したが、同制限にはLoopholeの存在や安定的な電力供給と環境配慮の両立などの課題が内包する可能性がある。DNE21+モデルを用いて、各種シナリオ条件(温暖化対策あり/なし、石炭火力(低/中効率、高効率、CCSあり/なし)に関する融資制限)におけるGHG排出量および平均削減費用を推計し、融資条件、設備構成、Loopholeに関する検討を行った。Loopholeに陥るとGHG排出量、平均削減費用とも増加する恐れがあり、このような融資制限ではなく、途上国ごとに技術導入の障壁を把握し、緩和するような施策の検討が必要である。
14:10 地球温暖化のリスク管理戦略 [3,679KB]
杉山大志 (一財)電力中央研究所 上席研究員

発表主旨:
温暖化の悪影響はよく分かっていない。IPCC報告書においても正確さを欠く例(AR5 WG2のSPM)や検討不足の点がある(例:砂浜の消失、ツバルの経済と環境など)。温暖化の影響に際しては、他の条件との比較(人為的影響;首都圏の地盤沈下事例、茅ヶ崎の海岸消失、社会問題;ツバル離島経済)が重要であり、温暖化のリスク評価に関しては人命や経済損失をエンドポイントにすべきだが、ハザードの評価になっていて、両者が混同される場合が多いので注意が必要である。人間へのリスクを考えると、温暖化問題の本質は温暖化の速さであることから、その目標を「温暖化の速さ climate velocity」にすることを提案したい。さらに気候感度やハイエイタス、さらには温暖化影響や人間社会の変化といった不確実性が自然科学・社会科学の両面で大きいことから、「順応型管理 adaptive management」をすることを提案する。なおCO2の管理はストックの問題なので順応型管理との相性が悪いかもしれないが、管理目標を温暖化の速さに替えることで、改善される余地(ジオエンジニアリング、海洋CCSの時間を買う技術としての活用)がある。
14:55 休憩
15:15 次期排出削減枠組み策定における削減努力の衡平性指標 [412KB]
William A. Pizer, デューク大学 教授

発表主旨:
削減努力の指標を検討する。排出削減を成功させるためには削減努力を比較する実用的メカニズムが必要である。比較の動機付けとしては、特に削減促進は一人が良い方向に向かえば皆が良い方向に進むが、悪い方向に向かうと皆も悪い方向に進むものである。指標の原則としては、包括的で計測可能、再現可能、普遍的でなければならない。削減努力の指標としては、排出量の基準年ベース、予想値との比較、対人口比、対GDP比、絶対値か変化率かなど様々な指標が考えられる。炭素価格やエネルギー価格も考えられる。すべての国に適応可能な包括的で測定可能な単一の指標はない。複数の指標で削減努力を計測することが望まれる。
16:00 排出緩和の寄与の評価 [95KB]
Joseph E. Aldy, ハーバード・ケネディスクール 助教授

発表主旨:
効果的な事前及び事後評価のための国際組織、市民社会及び学術界の役割を紹介する。協約には不確実性が存在するが、目標達成に向けた意志を明確に示すことが重要、フリーライドを防止するためモニターは重要、継続的な協力のため信頼を増すことが重要である。他の国際協約からの教訓(IMF,OECD,WTO)として、信頼性のある情報を得るため中立な第3者機関の常設の専門家による評価が重要である。専門家ビューではピアレビューのメカニズムを取り入れ、議論の中身も公開、意味のある相互議論が進みさらなるP&Rが加速される。市民社会はレビューアーをレビューする役割を担っており、専門家を補完する独立した評価が可能となる。国際的な政策の信憑性や長期的な実現のためには透明性が重要である。市民社会や独立した評価者は事前評価、事後評価の評価スキームにおいて重要な位置を占める。
16:45 2020年以降の排出削減目標に関する排出削減努力の評価 [2,056KB]
秋元圭吾, RITEシステム研究グループ グループリーダー

発表主旨:
約束草案についてEU、米国、中国などが目標を言及している。P&Rで、どのように各国排出削減目標をレビューするかが重要で、経団連自主行動計画はP&Rの仕組みであり、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルがうまく機能し、効果を挙げた。国際的にもレビュー(事前評価と事後評価双方)の仕組みをうまく構築し、PDCAサイクルを作り上げ、各国の排出削減機会を見出し、可能な排出削減を促していくことが重要。排出削減努力を測るための指標として、①CO2原単位やエネルギー原単位の絶対的な水準、②原単位の改善率、③ベースライン排出量比での削減率、④排出削減費用などが考えられる。公表されている約束草案(日本(仮)を含む)について事前評価指標例を用いて各国の目標の位置づけを確認した。複数の指標で評価することが重要である。現在、言及の約束草案を合わせても450 ppmとは大きなギャップがあるが、2℃目標実現のパスは多くあり、2℃目標達成の可能性はないわけではない。PDCAサイクルを回し継続的な排出削減を行い、長期的には革新的技術開発で大幅に削減していくようにすべきである。
10:00 閉会挨拶
 本庄孝志, RITE専務理事

(司会)松本真由美

※講演代行のお知らせ

下記掲載の通り、Carlo Carraro氏(ベニス大学)に講演いただく予定でしたが、直前にトラブルに見舞われたことによる影響で来日中止となったため、プログラムを変更し、RITE主任研究員長島美由紀が代行講演を行いました。
中止となった講演:
Assessing Post 2020 Climate Policies: Emission Paths, Investments, Financing[3,269KB]
(Carlo Carraro, Professor, Venice University)

お問合わせ

〒619-0292 京都府木津川市木津川台9-2
(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE) システム研究グループ
TEL: 0774-75-2304  FAX: 0774-75-2317

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