研究内容

  1. バイオ研究グループ HOME>
  2. バイオ燃料生産>
  3. バイオブタノール

バイオ燃料生産

バイオブタノール

当研究グループでは代謝工学的改変手法によって微生物にブタノール生合成経路を導入した遺伝子組換え株を構築し、独自に開発したRITE Bioprocessによるバイオブタノール(イソブタノール、n-ブタノール)の高効率生産技術の開発に取り組んでいます。

ブタノールはガソリン代替としてエタノールよりもエネルギー密度が高く、蒸気圧が低く、水と混和しにくいという優れた特性を有しています。さらにブタノール(C4)を出発原料として化学変換によってジェット燃料(C9-C15)を製造することができます。

即ち、植物由来のバイオブタノールから製造したバイオジェット燃料で航空機を飛ばすことができます。航空機からのCO2排出削減には原油から植物由来の原料に置換することが必須と認識され、業界団体の動きが加速しています。ブタノールを原料としたジェット燃料は、Alcohol to Jetを略してATJ燃料と呼ばれ、2016年に米国材料試験協会(ASTM)の規格をクリアし、商業フライトへ利用が可能となりました。

こうした動きに先駆け、当研究グループでは、RITE Bioprocessを利用した高効率バイオブタノール生産プロセスの開発を進めてきました。この中で我々は国際共同研究活動の一環として、経済産業省の「革新的なエネルギー技術の国際共同研究開発事業」を実施しました。この事業では、米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)との共同研究により、非可食バイオマス由来の混合糖を原料としたバイオブタノール生産技術の開発、および、米パシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)との共同研究により、ブタノールをジェット燃料などのdrop-in燃料に変換する技術開発を進めました。加えて、生産株のブタノール耐性の向上、生産株の代謝経路の最適化、および省エネルギー型ブタノール回収技術の開発等を行いました。

「RITE Bioprocess」によるバイオブタノールおよびジェット燃料生産


<「RITE Bioprocess」によるバイオブタノールおよびジェット燃料生産>

イソブタノール生合成経路において、AHAIRは補酵素としてNADPHを必要とする酵素です。しかし酸素抑制条件での糖代謝で生成される補酵素は主にNADHで、NADPHはほとんど生成されないことから、酸素抑制条件下でRITE Bioprocessを行う場合ではAHAIRはあまり機能しないという問題がありました。そこで当研究グループでは遺伝子への変異導入によってNADH依存性のAHAIR (IlvCTM)を開発し、これをイソブタノール生産菌株に導入することでRITE Bioprocessによるイソブタノールの高生産では、世界最高レベルの高生産性を達成しています。

イソブタノール生合成経路の図

<イソブタノール生合成経路>



JALプロジェクト

事業化に向けた取り組みとして、日本航空株式会社(JAL)が主催する「10万着で飛ばそう!JALバイオジェット燃料フライト」プロジェクト(2018年~2020年)にて当研究グループの技術が採用されました。本プロジェクトは、日本航空株式会社(JAL)と日本環境設計株式会社(現 株式会社JEPLAN)が協力して回収した古着を原料とし、バイオジェット燃料を製造するものです。本プロジェクトには、RITE発のベンチャー企業であるGreen Earth Institute株式会社(GEI)がRITEと共に参画し、RITEが開発したコリネ型細菌を使用して、RITE Bioprocessによりイソブタノールを生産しました。2020年には、このイソブタノールから製造されたバイオジェット燃料が、純国産として、初めて国際規格であるASTM D7566 Annex5 Neatに合格しました。そして、国産バイオジェット燃料を搭載した初フライトが、2021年2月4日のJALの羽田ー福岡線で実現されました。(詳細はこちら

今後は、これらの要素技術を更にブラッシュアップするとともに、要素技術の統合・最適化、様々な非可食原料の利活用などを通じてバイオブタノールからのジェット燃料生産と実用化・事業化を目指します。

Pagetop