<プログラム研究開発 平成14〜15年度>

地中メタン生成菌によるCO2からのメタン再生のための
基盤技術の開発



目的及び背景

国内に存在する一部の堆積盆(盆地状の地層)において、メタン生成菌等の微生物活動 によって生成されたメタン資源が堆積されていることが知られている。メタン生成菌は始 原菌の一種であり、太陽光なしでCO2と水素源からメタンを合成することによりエネルギ ーを得ている嫌気性微生物である。近年、1,000m級の地下深部や海底下の玄武岩層でメタ ン生成菌の活動が確認されている他、相良油田(静岡県)や琵琶湖周辺地域においても微 生物起源と考えられるメタンガス等が堆積されていることがわかっている。

本研究は、CO2の排出量を削減することを目的として、メタン生成菌等が活動する 堆積盆にCO2を注入し、メタン資源に変換して回収するために必要な基盤技術について検 討するものである。

目標とするシステム概念

CO2注入一メタン回収システムの概念を図に示す。

メタンを胚胎する堆積盆の帯水層中にCO2を注入し、メタン生成菌の活動によりメタン 等の天然ガスに変換する。天然ガスは、天盤シール層により帯水層上部に集積させて回収 する。天然の地質環境条件を利用してCO2をメタンガスに変換して回収する技術であるこ とから、立地上の社会的問題は比較的小さく、速やかな実用化が期待できる。


CO2注入−メタン回収システム概念図

CO2注入−メタン回収システム概念図

成果

(1)メタン生成堆積盆の地質学的探索

メタン生成堆積盆の地質構造やメタンの生成起源を調べるため、琵琶湖湖岸地域(滋賀県高島郡新旭町)において掘削調査を実施した。184m までの掘削調査の結果、5層のメタン胚胎層を確認した。地質構造は142m 以浅は比良山系、142m以深は鈴鹿山系の堆積物と推定され、184m付近で断層粘土に到達した。地層の年代は、磁化測定によりいずれも78万年以下で あった。また、メタンガスの炭素(δ13C)及び水素同位体(δD)を分析した結果、メタンは微生物活動によってCO2が還元されて生成した可能性があることがわかった。

(2)地中メタン生成機構の微生物学的解析

地中メタン生成機構の微生物学的解析として、琵琶湖のメタン胚胎層からサンプリングした土壌を対象に、DNA の抽出とDGGE 法を用いた種々の深度における菌相のバンドパターンに基づく比較、さらにバンドの塩基配列解析による培養に依存しない菌相解析を行った。この結果、メタン 胚胎層にメタン生成アーキアや、メタンハイドレートを含む深海底泥などの深度地下から見つかっているアーキアが存在することが示された。この結果はメタン 胚胎層においてメタン生成菌がメタンを生産していることを支持した。

(3)地下ガス封入・CO2圧入一メタン採取システムの検討

CO2圧入-メタン採取システムに必要な要件について検討を行った。その結果、シール層の特性として破過圧が高いこと、及び 破過後に水分飽和度が低下しても比透気係数がすぐに大きくならない空隙径分布を有することが重要であることが明らかになった。また、移流の極めて小さい貯 留層を選定するとともに、メタン生成菌の微生物学的特性を調査し、移流や拡散によるフラックス以上のメタンの変換速度を確保していくことが必要と考えられ た。





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